http://pillows.jp/

ハッピーでシニカルで、実にthe pillows(以下、ピロウズ)らしいアルバムだ。自分で気持ちをコントロールしてハッピーになろうと歌う『王様になれ』や『パーフェクト・アイディア』など、小気味よく気分転換できるポップでオルタナティヴな曲揃い。ピロウズの原点であるオルタナティヴ・ロック色を濃く出しながらポップでキャッチーな10曲、たっぷり楽しんで30分強。無駄なくとことん楽しめる『NOOK IN THE BRAIN』について、山中さわおに語ってもらった。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:今井智子

──『王様になれ』が先に配信限定でリリースされましたが、この曲がステップになってアルバムに進んだと考えていいんでしょうか?



「そうですね。もしシングルが出てなかったら、アルバムのタイトルを『王様になれ』にしようかと思っていたぐらい。この曲と『パーフェクト・アイディア』が一番分かりやすいんですけど、『王様になれ』という曲のサブ・タイトルが『NOOK IN THE BRAIN』だと思っていて。“脳みその隅っこ”に何とか自分で辿り着いて、一度も開いたことのない引き出しを開いて、知らなかったアイディアを取り出して。抗えないものに関して、避けて通れない自分を取り巻く環境を、どうハッピーな方向に導くかということですかね。現実の変えられないことに関して、受け入れ方を見つけたいっていうか……例えば、あと30年は生きられると思うか、あと30年しか生きられないと思うか。そういう脳みその使い方」

──今のさわおさんのマインドがそういう感じなんでしょうか?

「僕はもう憂鬱から抜け出した人間なので、まだ抜け出してない人に、出口がいつか必ず見つかるもんだという経験を伝えたいみたいな気持ちがあったのかな」

──『王様になれ』は歌い出しを少し抑えて、次に上げていくスタイルですね。こういうのも曲を作りながら考えるんですか?

「この曲はそうですね。あらかじめ1オクタープどーんと上がるというのは、もともとそういう曲にしようと思いました。ニルヴァーナとか、僕の好きなオルタナティヴ・ロックだと、わりとこの手のってあるじゃないですか(笑)。その感じ。このところロックンロールとばかり僕は口走っていたんだけど、こういうオルタナが似合う曲をたくさん作って、それがとても気に入ったので。気に入った曲ができたらフタをするのも不自然なので、もう1回やるかと思って」



──1曲目の『Envy』からオルタナ感炸裂です。

「1曲目の『Envy』みたいのは、8分の6拍子と3拍子が行ったり来たりする。あと英詞だし、ピロウズはこういうオルタナティヴ・ロック好きだなーみたいなのを分かりやすくやった作品だと思うんです。アルバム1曲目だからツアーでも1曲目になると思う。自分がそうだからかもしれないけど、聴くほうも集中力ってそんなに続かないと思い込んでいて、8分の6拍子から3拍子に行くっていう、しかも歌ものでもなくて英詞の曲っていうのは、1曲目に出てったテンションのうちにバーン! と終わったほうがいいだろうと思っていて。ギターソロがないんです、この曲。もちろん入れても不自然じゃないアレンジはできるんですけど、ちょっとでもマニアックなにおいがするものって短いほうがいいんじゃないか、味があるまま飲み込む、みたいな感じですかね」

──英語の曲は歌ものというイメージじゃないんですか?

「歌ものじゃないですね。全曲じゃないけど、内容に魂を込めることもないし、内容に魂を込めるなら日本語でやるだろうし。バンドごっこをやってるような感じなのかな。自分の青春時代から考えたら洋楽のほうが好きなバンドが多いので、憧れのバンドの真似したいみたいな気持ちがあるじゃないですか、高校生ぐらいから。まだそのまんまやってるという感じ。日本詞じゃできない発声とかがスンナリできて、歌う時も録ったものを聴くのも気持ち悪くないんですね。それは日本語でやると、やはり何かの真似をしてる感を自分で感じると気持ち悪いので、洋楽の憧れはやはりゼロにはならないというか。そういう名残ですかね」


※続きは月刊Songs2017年4月号をご覧ください。

ページを閉じる

Topページを開く